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風がサワサワと俺達の髪を掬って揺らした。
「その言葉の通り、その子はいつも私の傍にいてくれた。私ね……その事を……思い出したの。だから、その人と恋をしてもいいかなって……。本当はもうその人のこと、ちょっと好きかもって……」
「ま、ま、ま、真琴?そ、それって?」
俺は人差し指で、自分の鼻を指差す。
「でもね、海渡がロクな奴じゃないからやめとけって。お兄ちゃんもそう思ってる?」
「……っ!それってさ、もしかして……お、俺?口が悪くて、顔もイマイチで、性格が最悪くて、イヤな奴!?はぁ?何それ?それ……まさかの俺かよ?」
俺は河豚みたいに、ぷぅーっと頬を膨らませた。
「ふふっ。でも、ダメなんだよね?」
「いゃいゃいゃ、全然OKでしょ!こんな、良い男いないよ。真琴のことを、こんなに想ってる男は、世界中どこにもいねぇ!それは、兄貴にも負けない自信はある」
「海渡……」
真琴が俺を見て涙ぐんだ。
「あ……はっ、泣くなって!」
「私ね、ちゃんとお兄ちゃんに話してから、海渡と始めたかったの。海渡と……ちゃんと向き合いたかったから」
「うん。俺も兄貴に相談するつもりで、今日はここに来たんだ。兄貴、認めてくれるよな」
俺はもう一度、両手を合わせて拝んだ。
兄貴。
俺は子供の頃から、ずっと真琴のことが好きだった。
その想いは高校生になった今も変わらないよ。
俺がずっと守る。
真琴は俺がずっと守るから、安心して見守っていて欲しい。
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