93人が本棚に入れています
本棚に追加
お兄ちゃんの指が止まり、私と目が合った。
――トクン、トクン、鼓動は太鼓のように乱れ打ちをしている。
「真琴、何かリクエストある?」
な、なんだ……。
リクエストか……。
私はてっきり……。
「どうした?さっきの曲、気にいらなかったかな?俺が作曲したんだよ」
作曲!?
お兄ちゃん、そんなこともできるんだね。
「真琴はもっとテンポのいいメロディーが好きなのかな?」
私はブルブルと首を左右に振る。
そうじゃなくて……。
あまりにもいい雰囲気だったから。
二人きりだし。
こんなシチュエーションははじめてだし。
高校に入学して、お兄ちゃんに少しだけ近づけた気がして……。
はじめてはやっぱり……
お兄ちゃんがいい……。
「リクエストは……」
お兄ちゃんに顔を近づけ、ゆっくりと瞼を閉じた。
――と、その時……
バンッ!と勢いよく、音楽室のドアが開いた。
「わ゛っ!」
「きゃっ!」
「兄貴!?え?え?真琴!?は?真琴!?マジかよ!ごめん!」
――バンッ!
大きな音を立てて、すぐにドアが閉まった。
「海渡か。俺が話してくるよ。真琴は教室に戻ってて」
「……うん」
よりによって、私とお兄ちゃんの秘密を見てしまったのは、お兄ちゃんの弟で、同じクラスの海渡(かいと)だった。
まじ、最悪。
最初のコメントを投稿しよう!