プロローグ

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 お兄ちゃんの指が止まり、私と目が合った。  ――トクン、トクン、鼓動は太鼓のように乱れ打ちをしている。 「真琴、何かリクエストある?」  な、なんだ……。  リクエストか……。  私はてっきり……。 「どうした?さっきの曲、気にいらなかったかな?俺が作曲したんだよ」  作曲!?  お兄ちゃん、そんなこともできるんだね。 「真琴はもっとテンポのいいメロディーが好きなのかな?」  私はブルブルと首を左右に振る。  そうじゃなくて……。  あまりにもいい雰囲気だったから。  二人きりだし。  こんなシチュエーションははじめてだし。  高校に入学して、お兄ちゃんに少しだけ近づけた気がして……。  はじめてはやっぱり……  お兄ちゃんがいい……。 「リクエストは……」  お兄ちゃんに顔を近づけ、ゆっくりと瞼を閉じた。  ――と、その時……  バンッ!と勢いよく、音楽室のドアが開いた。 「わ゛っ!」 「きゃっ!」 「兄貴!?え?え?真琴!?は?真琴!?マジかよ!ごめん!」  ――バンッ!  大きな音を立てて、すぐにドアが閉まった。 「海渡か。俺が話してくるよ。真琴は教室に戻ってて」 「……うん」  よりによって、私とお兄ちゃんの秘密を見てしまったのは、お兄ちゃんの弟で、同じクラスの海渡(かいと)だった。  まじ、最悪。
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