【1】恋色

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【海渡side】 「つうか、俺、すげぇびっくりしてんですケド。イケメンでモテモテのあの兄貴が、何でよりによって……」  俺は遅れて教室に入ってきた真琴に暴言を吐く。  真琴は慌てて俺の口を両手で塞いだ。 「バカ、教室で言わないでよ」 「俺、兄弟なのに全然知らなかったし!俺達、幼なじみだろ。陰に隠れてコソコソと!」 「シーッ!海渡、男のくせに口が軽いんだから」 「なんで?」 「学校で噂になるとイヤだから。お兄ちゃんは受験生だし、迷惑かけたくないんだ」 「なるほどね。不純異性交遊は校則で禁止だしな。音楽室でチューしてたことがバレたら、即停学だよな」 「バーカ!私とお兄ちゃんはそんなんじゃないし。絵に描いたモチみたいに、清らかな交際なんだからね!」 「は?意味がわかんねぇ」 「絵に描いたモチは食べれないでしょ。そんなことはしないってことよ」 「お前なら、山羊みたいに画に書いたモチでも食うんじゃね?」  俺はニヤニヤしながら真琴を見た。  要するに、キスは未遂に終わったってことがいいたいんだろう。  「本当にイヤな奴。貴公子のようなお兄ちゃんと、野蛮な海渡が兄弟だなんて、いまだに信じられないよ」  俺だって、信じらんねーよ。
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