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「普通は、父さんのことや外国の生活を聞いて同情されるのがオチだったんだけどさ」
「え?」
タロウは私の頭を撫でた。そしてそのまま、頬に手を添えた。
「また会えると信じていたよ。あのお守りの意味は、日本で言う縁結びと一緒なんだ」
「そ、そうなの?」
「あの後すぐに引っ越すってわかっていて、連絡先も渡せなかった。だから、チビがチビなりに考えた苦肉の策があれだった。本当に、また会えた」
一瞬の出来事だった。おでこに柔らかい何かが当たったと思ったら、頬にも柔らかい何かが当たった。
「え、え? あ、あの」
「さ。保健室行って教室戻らないと」
タロウは何事もないかの様に歩き出した。
その後の記憶は曖昧で、事実でさえも私の捏造による妄想なのでは、と疑心暗鬼になっていた。
気付けば今日の授業は終わっていて、帰る時間になっていた。
「タロウ帰ろう?」
教室の扉から、愛くるしい顔の女の子が顔を覗かせた。
「ヨウタも一緒でしょう? ほら、タロウ。早く」
「ヒヨリちゃん、ごめん。俺、部活動見学行くから」
「そっかあ。てことは、タロウも行くの? バスケ部」
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