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「これはまずい。このままだと、毎日これをやるはめに」
「何か言ったか? 気持ちが澄んでくるな! なあ、沖川!」
その後も、空き教室の隅々を掃除した。途中、担任教師は購買の弁当を買ってくれた。第一号入部者記念らしい。入部していないのに、だ。
昼休憩も終わり、気付けば遠くの空が橙色に染まり始めていた。
「よし! 今日はこれにて終了! 気を付けて帰れよ!」
「はあ。先生さようなら」
校舎からは吹奏楽の演奏が響き、校庭からは息の合った掛け声が聞こえていた。校門を出ると、右隣から声が聞こえた。
「ハナコ!」
「わあ!」
そこには、きょとんとした表情のタロウがいた。
「お化け見た様な反応されると、何か悲しいよ」
「あ、違うよ、びっくりして。どうしたの? 誰か待っているの?」
タロウは首を縦に振った。
「あ、あのヨウタって男の子?」
この問いには、首を横に振った。
「あ、じゃあ。さっきのあの可愛い人」
タロウは少し呆れた顔で首を横に振った。本当にわからなくて黙っていると、タロウは私のおでこを小突いた。
「ハナコだよ、ハナコ。気付け」
「私? 何かした?」
「ハナコと一緒に帰りたくて。久々の再会だから」
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