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「交流を深めるためとか。そんな生易しいもんじゃないから」
「どういうこと?」
もしやこれは、高校生活での有名なシーン、焼きそばパン買ってこいよ的な扱いをされるのだろうか。
「絶対ハナコの考えている様な意味じゃないから」
「ち、超能力」
「何だよそれ」
タロウは腹を抱えて笑っていた。ふと目が合うと、タロウは少し恥ずかしそうに俯いた。私の見間違いでなければ、その耳は真っ赤になっていた。
「えっと、あのさ。明日も一緒に帰れる?」
「無理」
「即答かよ!」
「柔道同好会の教室を掃除しないといけないらしいから」
私は事の顛末を話した。
「別に行かなくても」
私もそう思う。断れば良い。けれど、引っ掛かるのだ。
「私、中学校まで腫れ物扱いだったというか。先生もあんまり声掛けて来なかった。けれど、先生は初めて、私を何かの始まりに誘ってくれたの。もう少し、考えてみたいんだ」
自分で言って驚いた。私はいつ、そんなことを考える様になったのか。
「そっか。わかった」
何故か、私も少し残念だった。
「えっと、じゃあ。また明日ね」
私が駅に入ろうとすると、タロウが私の腕を掴んだ。
「離れていた分の時間を埋めるには、少しでも一緒にいるべきだと思うんだ」
「急に哲学っぽく言ってるけど」
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