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「うん。特に言うことないんだけどさ、そういえばそんな子いたなと思って」
「目が緑のビー玉みたいで綺麗ってあんたずっと言ってたわねえ」
同じ中学校の人たちが誰も受けていない、隣町の高校に入学した。周囲の新入生たちは、知り合いもいたのだろうか、緊張しておらず、世間話をしていた。
「入学式の時にふと思い出してさ。そんだけ。あ、あと今日ね、入学式に出ていない新入生がいたみたい」
「あら。どうしたのかしらねえ」
「同じクラスの男の子みたいだけど」
「進学校にも不良はいるのかしら?」
「どうしておばさんってすぐ憶測で決めつけるのかなあ?」
おばさん、という言葉に反応した母が、私のほっぺでたこ焼きを作りながら言った。
「心機一転したいって言うから隣町の高校に行かせるわけだけど。大丈夫そう? 豚饅頭って言われたら飛び掛かって潰してしまいなさい」
「怪我させたら大変だよ」
私がそう言うと、母は私の頭を撫でた。
「冗談よ。そのくらいの強気で頑張れってこと。ハナコ。あんたは本当に誰に似てこんな優しく育ったんだか」
「隔世遺伝じゃない?」
「そこは母と言いなさい、娘よ」
二人して笑い合っていると、いつの間にか帰宅した父が恨めしそうにネクタイを外していた。
「おかえり。お風呂先入ったら?」
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