第一話

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 ヨウタという男の子のこそこそ声は、しっかりと聞こえていた。心機一転、学校を変えたところで、人々の着眼点には変わりがない、ということだろう。  タロウという男の子は、その助言など聞こえなかったかの様に私に詰め寄った。 「これ。今は日本で手に入るようになったけど、前はそうじゃなかった」  そう言うと、タロウという男の子は、自身の鞄に付いたそれを見せるように持ち上げた。 「元々はお守りの一種なんだ。持ちやすい様に、俺が母さんに頼んでキーホルダーにしてもらった」  彼の持つそれと私の持つそれは、全く同じ物だった。 「もしかしてさ、昔、林間学校で」 「あ、いや、えと、あの」  詰め寄られて顔が近く、更には小さな息遣いも大きく聞こえる距離に戸惑った。 「おーい。ホームルーム始めるぞー」  タイミング良く、担任教師が教室に入って来た。 「ん? おい、山野タロウ! 席に戻れ」  担任教師の言葉に、タロウという男の子は渋々着席した。 「よし。まず、改めて入学おめでとう。俺はこのクラスの……」  私は黒板と担任教師に集中していた、はずだったのだが。 「おーい。山野タロウ。お前の首は左向きなのかー? 前を見ろ」  じっとりとした視線が感じられる。ただの自惚れで勘違いならば良かったのに。     
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