第一話

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「山野タロウ! 前だ、前を向け! 学年首席合格者だからって調子乗るなー。その杭は俺が打つぞー」  教室中がざわついた。中には、王子と呼び見つめる者もいた。 「先生。俺、寝違えたみたいで、こっち向いてる方が楽なんです。話はちゃんと聞いてます」  そんな嘘が通用するわけがない。幼稚園児でさえ、見破るだろう。 「なんだ。そうだったのか。すまんな。酷かったら言え。保健室で湿布貼ってもらえ」 「あ、はい。ならそうします。けど一人だと歩くの怖いから、付き添いに一人いいですか?」 「そうだな。俺が行けばいいが、配るプリントが多くてな。入学前の宿題提出も見なければならん。よし、折角だ。左隣の、沖川ハナコ! 付き添ってやれ」 「え、わ、私ですか?」  担任教師は頷いた。 「クラスメイトとの交流に繋がるぞ。それにお前は次席だったからな。いいコンビだ」 「コンビって」 「それに体格も、他の男子よりも良いしな」  教室中が笑いに包まれた。 「何故笑う。俺は誉めているんだ。そうだ。俺は柔道部の顧問なんだが、入らないか?」 「え、あの」  担任教師がさらりと私を尊重してくれたこと、部活動に勧誘されたこと。二重の驚きで困り果てていると、隣席から不機嫌そうな声が聞こえた。 「先生。もうそろそろ」     
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