宝石探し

1/4
前へ
/17ページ
次へ

宝石探し

 時すでに遅し。物心の付いた頃には、いつも豚饅頭という渾名で呼ばれ、人々の興味の対象になっていた。それは決して良い意味ではなく、悪い意味が強かった。 「コレドゾ」  小学生の頃、林間学校で知り合った男の子が、覚えたての日本語をたどたどしく言ってから、半ば強引にお揃いのキーホルダーを押し付けて来たことがあった。両親以外からの贈り物は初めてでとても嬉しかった。初めて出来た友達から貰ったキーホルダーは、今でもブレザーの胸ポケットに入っている。  小学校の頃参加した林間学校での三日間は、今でも私の心の奥に鎮座していて、輝く記憶の宝物となっていた。 「ハナコ。入学式終わったからって安心していたら駄目よ? はい。豚饅頭没収」 「お母さん」 「ん?」  母は声だけで返事をし、私の腕に抱かれていた豚饅頭の袋を開け、かぶりついていた。 「昔さ、林間学校で出来た友達の話したでしょう?」 「色白でそばかす顔の男の子?」  母は相変わらず、私の前で豚饅頭を食べている。母の体型は、あの国民的猫型機械の様な体型の私と違い、すらりとしている。それは父も同じであり、父いわく、祖父とそっくりなまん丸だから隔世遺伝だろう、と言っていた。     
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加