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父が東京に出かけていない夜は、こっそり覚の部屋に忍び込みじゃれ合いながら眠りに就くのを、芳恵を始めとした家の者たちは見逃してくれた。
もはや召使いではなかった。
無二の親友だと思った。
そして、身体がいわゆる第二次成長期を迎えた頃。
覚を思うと、頭がぼんやりするようになってきた。
漁師だった父の骨格を受け継いだ彼は、十二になる頃にバスケットボールを始めたあたりからから急激に成長していった。
出会った頃は自分より小さく頼りなかった手足も首筋も、いつのまにか男らしく成長していく。
眩しくて、目がそらせなかった。
そばにいると胸が高鳴り、一人になると脳裏に焼き付いた覚をなんども思いだし、自然と身体が熱くなる。
しまいには、裸の覚に触れる夢を毎晩見るようになった。
こんなのは異常だと、朝になると我に返り憂鬱になる。
しかし、身体のどこかが覚に繋がっていて引きずられているような感覚は、中学に上がって東京で暮すようになっても変わらなかった。
むしろ、ますます覚のこと以外考えられなくなり、浅くしか眠れないし、勉学も身に入らない。
このままではどうにかなりそうだった。
飢えて飢えて、気が狂いそうだ。
なんでも良いから適当な言い訳を作って本邸へ戻り、覚の眠る部屋へ飛び込んだ。
どこか夏蜜柑の花の香りのする、真夜中の部屋で。
馬乗りになって息を乱し続けるだけの自分を、静かな瞳が見上げた。
ゆっくりと起き上がった覚にしっかりと抱きしめてもらって、涙が流れる。
唇と、唇を合わせて、それだけで胸がいっぱいになった。
あまりの心地よさに、どうしていいかわからない。
何度も何度も唇を合わせて、抱きしめあって、いつのまにか夜が明けた。
覚の胸の上で鼓動を聞くうちに、久しぶりに深い眠りに就くことが出来た。
その日から、覚は、身体の一部になった。
彼に触れたくて、理由をつけては帰郷した。
触れれば触れるほど、もっと欲しくなった。
唇を合わせて、抱きしめて。
熱くなった下肢を合わせているうちに、もっと、もっとと求めてしまう。
最初は獣の子どもがやるようなまねごとで満足していたけれど、だんだんとそれではすまなくなり、もっと深いところで感じたくなった。
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