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まあ、『悪運』と『懲悪』は使えるかもしれないが、他はどうなのだろう。
あ、そういえばこのカードは交換もできたはずだ。
「そうだ。僕はこの悪女というカード…使わないから、君のカードと交換しない?」
眼鏡の女性は少し考えて言った。
「博愛…でしょうか?」
「いや、凡庸がいいな。悪が目立ったら叩かれると思うんだ」
僕は女性とカードをトレードした。
すると、僕のデッキが光り始めたではないか。
変化したのは、受け取った『凡庸』というカードだ。
悪はついていないが『非凡』というカードに姿を変えている。
ただ、悪で非凡というのはどうなのだろう。どう見ても悪い結果しか招かない気がする。
おや、妙な笑い声が聞こえたので、そっと顔を上げてみると、先ほどの女性が眼鏡を光らせて笑っているではないか。一体、何がどう変化したのだろう。
彼女の手札を見ようとしたら、不敵な笑みを浮かべて手札をしまい込んでしまった。
『悪女』の効果なのだろうか。それとも複数のカードが干渉しあって全く別人になってしまったのか。個人的には『博愛』に頑張って欲しいが、悪は強いんだよな。
その女性は「ねえ…」と言いながら僕を見た。
「その悪才か悪運も交換しない?」
「謹んで辞退させて頂きます!」
まあ、こういう例もあるし、自分のデッキに強いカードがなくても腐ってはいけないと思う。交換以外にも自分を強くする方法はあるのだから。
それから半年後、女性は僕に目をやると言った。
「ところで、どうして君は悪いことしないの?」
「悪手があるからだよ。ヘマをして捕まるくらいならまじめに生きた方がいい」
「…誠実のカードあげようか?」
「大きなお世話だ!」
『誠実』に『悪女』をするな。全く…。
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