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◇ 片恋スーパーノヴァ
思い出せばキリがない。わたしがあげた、気張らない小さな贈り物たち。
わたしの想いがつまったガラクタのいくつかを持って、彼は遠くへ行く。
近所に住む幼なじみの壮ちゃんは、ふたつ年上。兄の様な存在……とは、まわりが言うだけでわたしはそう思ってはいない。
成績の良い壮ちゃんと同じ高校へ通いたくて勉強をがんばったのに、もう卒業なんだもの。一緒だったのは1年間だけ。時々こうして一緒に帰ることができるのも、あと少し。ほんのちょっとの歳の差を恨む。
卒業式が終わったら、壮ちゃんは遠くへ行く。わたしの知らない街の大学へ、思い出だけを連れて行く。
壮ちゃんには、バイト先で知り合った他校の彼女がいる。同じ大学へ進むから、近くに住むのかな。一緒に住むわけじゃなさそうだけれど、詳しく聞いていない。というか、聞きたくなくて。
わたしたち1年生と壮ちゃん3年生の教室は階が違う。数字と同じ1階と3階。
それだけなのに、とても離れていると感じる。同じ校舎の中にいるのに、壮ちゃんとなかなか会わないから。
「愛生(アキ)、プリント貰った?」
「貰ったよ。わたしこのまま帰るよ」
「壮ちゃん?」
「そうそう」
変なギャグみたいになってしまった。クラスメイトの久美が微笑んで「じゃあね」とスポーツバッグを持って教室を出ていった。陸上部の部活動へ向かうのだろう。
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