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わたしの教室は昇降口の隣にある。
教室の入口から顔を出して。下駄箱のほうを見た。まだ来ていない。来ればすぐ出ていくつもり。
壮ちゃんはバスケ部を引退したので、最近は一緒に帰ることが多くなった。
家が近所だから。幼なじみだから。理由はそれだけ。壮ちゃんは年下の幼なじみを送り届けるという気持ちでしかない。
中学のときも、高校でも、わたしが入学したら1年で壮ちゃんが卒業する。小さいころみたいにいかないのは認めていかねばならず、胸が痛かった。
教室からは段々と生徒が出ていき数人しか残っていなかった。校庭でランニングを始めたのはどこの部活だろうか。部活動のかけ声が夕焼けに染まっていく校庭に響いている。
壮ちゃんと同じ校舎で過ごせるのはあと少し。ひとつひとつを、大事にしたい。
ソワソワしながらまた下駄箱のほうを見ると、背の高い男子生徒が、友達と思われる男子生徒に手を振っていた。
「来た。壮ちゃん!」
わたしは教室から飛び出し、彼に向かって駆け出す。
「おお。ごめん、待っただろ」
「大丈夫だよ」
まるで恋人同士のようなやり取りだけれど、そのような要素はいっさい持たない。悲しいかな。
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