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「はい、お団子お待たせ」
おばちゃんが持ってきてくれたお皿には、みたらし、くるみ、あんこのお団子が並んでいた。
「しかし、ひとり暮らしっていろいろ買わないといけないから金が飛んでいく。バイト代貯めていてよかった」
「そうだよねぇ。壮ちゃんがんばっていたもんね」
「それに、愛生がくれた炊飯器、すげぇ助かった……」
「家電のほうがいいと思って」
「いやぁもう、本当に助かる。自炊予定だから炊飯器は必需品だし。ごめんな、お金使わせちゃって。高かったんだろ?」
「ひとり暮らし用の手頃なやつ選んだから、心配いらないよ。合格祝い&引越祝いだもん」
「嬉しかったよ。大事に使う」
メーカー品じゃなかったので、たしかにお手頃な商品だった。でも、いままでの色々なプレゼントの中で一番高額かもしれない。そして、これからの壮ちゃんにとって一番役立つと思う。ずっと見ているし、それくらいは分かるんだから。それに、最後のプレゼントになるかもしれないし。
壮ちゃんにだけ使って欲しいけれど……そう考えると胸がチクリと痛んだ。
「愛生は気が利くわ」
「まぁね。わたしと離れるの、寂しいでしょ」
「愛生のソウチャンソウチャンていうインコ呼びが聞けなくなるのは、寂しいな」
「インコ呼びってなによ……」
「そうむくれるな。かわいい妹と離れるのは寂しいと思ってる。ほれ、あんこ食え」
壮ちゃんが差し出したお団子は3個だった。いつもは4個をふたつずつ食べるのに。
「1個多いよ?」
「うん。愛生にやる」
頬杖で、わたしを見る壮ちゃん。優しく柔らかい笑顔で「愛生」って呼ぶ。もうちょっとで、見られなくなるし、聞けなくなるの。
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