◇ 片恋スーパーノヴァ

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今日までずっと、かわいい妹以上になれなかった。年下の、近所の幼なじみでかわいい妹……のような存在。それ以上でもそれ以下でもない。 壮ちゃんが取った一番上のお団子、二個目を串ごと口に入れる。間接キス。間接の、わたしのファーストキス。小さい頃から、壮ちゃんだけだった。甘いあんこと、柔らかいお団子、壮ちゃんの優しさ。全部に泣きたくなる。お団子がぼやけて見えたから、必死に瞬きをした。こんなところで泣いちゃいけない。 「荷物が多くなるのも困るから、置いていくものと持っていくものと、選別も難しいんだけどさ。俺たぶん全部持っていきたくなるタイプ」 「なんか分かる気がするけど、部屋が埋まっちゃいそうだよね」 「全部思い出があるし、片付け中に見ると思いを馳せちゃって進まないわけ。愛生に貰ったカップとか、現役で使っているから持っていくし」 「彼女、嫌がらないの? 変えればいいのに。アニメキャラのカップだし」 「まだ使えるんだし買う必要無いよ。そんなことを嫌がるヤツじゃないし。お前が心配することじゃないの」 置いていけばいいのに。でも、持っていくって言われて嬉しい。嬉しいけれど、寂しい。 「ここ、付いてんぞ」 壮ちゃんの親指が、わたしの唇についたあんこをそっと拭った。心臓が跳ね上がる。 「変わんねーな。愛生は昔から」 顔が熱くなるのを感じる。 そうだね。昔から変わらない。食べカスを口につけちゃうのも、それを見て壮ちゃんが笑うのも。クシャっとなる笑顔がわたしの呼吸を止めるのも。 「な、夏休みとか帰ってくるんでしょ?」 言いながら、顔を隠すようにして湯飲みのお茶を飲んだ。 「そうだな。夏休みとか年末年始とかかな。そのときは連絡するよ」 「わたしも色々忙しいんだからね。壮ちゃんが帰ってきたときに彼氏が出来ていて、デートの最中かもしれないし」 「はは。だったら邪魔しないよ」 壮ちゃんの優しい笑顔は、お団子より甘い。
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