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そこからすぐに見えてきた自宅を通り過ぎ、
隣の家の白い門の前に立つ。
荷物を届けると約束した。
この時間なら泉じゃなく、おばさんが出るだろう。
そう言い聞かせてベルを鳴らした。
が、しばらく待っても応答はない。
再度べルを鳴らすと、今度はドアが開いた。
開けたのは、今一番会いたくなかった当の本人だ。
風呂上がりなのか、長い髪が濡れている。
よりによって今の俺に、この姿は目の毒だ。
「おばさんは?」
気を逸らそうと、どうでも良い質問をして、
トートバッグを上がり框に置いた。
「なんか急に甘いものが食べたいって、
コンビニに行ったの」
「そうか、ちゃんと鍵、閉めとけよ。じゃあな」
「あ、裕ちゃん!」
直視を避けて、ドアを開けようとした俺の
目の前に、なぜか泉が立ち塞がる。
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