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「誤解を解こうと思えばできたんだけど、
せっかくだからこれを利用したらって
先輩に言われて」
「つまり、わざと噂を放置したってことか?」
うん、と頷く泉の仕草を見て、天を仰ぐ。
ちゃんと確認しなかった俺も俺だけど、まさか
単なる誤解とは。
「裕ちゃん、怒らないで!だって裕ちゃんたら、
いつまでもあたしのこと、子供扱いなんだもん。
あたしはずっと前から裕ちゃんのこと、ちゃんと
男の人として見てたのに。だから、裕ちゃんにも
女の子として意識して欲しかったの。高校生に
なったら絶対に裕ちゃんと……」
切々と訴える泉の口を、人差し指で押さえた。
完敗だ。
つまり俺は、泉に思惑にまんまと乗っかって
しまったってこと。
くやしいけれど、泉の方が俺よりも
行動力があった。
遠回しな方法だったけど、行動に出た泉の方が
はるかに勇気がある。
「怒るわけない。というか、怒れないだろ。
俺が鈍かった上に、ヘタレだったせいだしな」
俺がいつまでもグズグズしたから、泉がこんな
ことを実行することになったんだから。
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