フライングキス 【祐太編】

3/18
前へ
/18ページ
次へ
「すごい荷物だな。いったい何が入ってるんだ?」 ぶら下げたトートバッグを奪い取ると ずっしりと重い。 なるほど、泉がよろけていたのも頷ける。 トートバッグは男の俺が持っても、そうとう 重いと感じた。 「担任が急に置き勉を全部持って帰るように 言うんだもん。裕ちゃんがいてくれて 助かっちゃった」 「あー、たまに盗難とかあるからな。 長期休みの前は、持ち帰るように言われるんだ」 バックを肩にかけ、先に教室を出た俺を、 クラスメイトに呼び止められていた泉が 追いかけて来る。 「いいのか、話があるなら待つぞ?」 「ううん、大丈夫。皆がね、裕ちゃんみたいに 頼りになる人がいて良いねって、羨ましがられ ちゃった」 「はは。俺は泉の下僕みたいなもんだからな」 「もう~、そんな言い方しないでよ。 あたしは裕ちゃんをそんなふうに思ったこと ないんだから!」 プクッと頬を膨らませ、泉が俺を見上げてくる。 そんな顔も可愛くて、その膨らんだ頬を突つきたい 衝動に駆られた。 もちろん実行に移すことはないけれど。 俺の悩みというのはまさに、この衝動にあった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

113人が本棚に入れています
本棚に追加