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「すごい荷物だな。いったい何が入ってるんだ?」
ぶら下げたトートバッグを奪い取ると
ずっしりと重い。
なるほど、泉がよろけていたのも頷ける。
トートバッグは男の俺が持っても、そうとう
重いと感じた。
「担任が急に置き勉を全部持って帰るように
言うんだもん。裕ちゃんがいてくれて
助かっちゃった」
「あー、たまに盗難とかあるからな。
長期休みの前は、持ち帰るように言われるんだ」
バックを肩にかけ、先に教室を出た俺を、
クラスメイトに呼び止められていた泉が
追いかけて来る。
「いいのか、話があるなら待つぞ?」
「ううん、大丈夫。皆がね、裕ちゃんみたいに
頼りになる人がいて良いねって、羨ましがられ
ちゃった」
「はは。俺は泉の下僕みたいなもんだからな」
「もう~、そんな言い方しないでよ。
あたしは裕ちゃんをそんなふうに思ったこと
ないんだから!」
プクッと頬を膨らませ、泉が俺を見上げてくる。
そんな顔も可愛くて、その膨らんだ頬を突つきたい
衝動に駆られた。
もちろん実行に移すことはないけれど。
俺の悩みというのはまさに、この衝動にあった。
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