フライングキス 【祐太編】

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俺と泉が出会ってから今年で十二年。 干支が一回りするほど長い付き合いの間、 俺達の関係は世話焼きの兄と、甘えん坊の 妹だった。 それがここに来て、俺は泉に対する自分の 気持ちに、以前とは違うものが加わったことに 気づいてしまったのだ。 それは泉の高校の入学式の日。 俺が中学を卒業して学校で会うことが 無くなったために、泉とは顔を合わせる ことが以前よりもかなり減っていた。 そんな一年を過ごし、久しぶりに俺達は 早朝から顔を合わせた。 付け睫毛なんか必要の無い、長い睫毛に 縁取られた大きな目と、チャームポイントの 少し厚めの唇は以前と変わってはいない。 泉が可愛いことなんか、出会った時から 知っているし、見慣れている。 その俺にさえ、濃紺の生地に白いパイピングが 施されたブレザーに、アクセントにピンクが 織り込まれた格子柄のプリーツスカートという、 真新しい制服を着た泉は、一層可愛く思えた。 そんな泉が照れくさそうに微笑みながら、 クルリと目の前で回って見せた時─── この笑顔を、この姿を、誰にも見せたくない。 自分だけのものにしておきたい。 そんな想いが俺の中にわき上がったのだ。
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