フライングキス 【祐太編】

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「はー、暑っつ。もう四時過ぎてんのに すげえ日差しだな」 「ほんとだね。そうだ、コンビニでソフト クリーム食べない?裕ちゃんには荷物持って くれてるお礼にあたしが奢るよ」 ニキビ一つ無い、なめらかな肌に浮いた汗を ハンカチで押さえながら泉が言う。 降車駅の近くのコンビニは、俺達の学校帰りの 寄り道スポットだ。 四時を過ぎたというのに、外はまだ真昼並みの 日差しが照りつけている。 途中で一息入れるのも良いかもしれない。 「ああ、いいな。久しぶりに寄るか」 「やった。今の期間限定味はなんだっけ? 裕ちゃん知ってる?」 承諾すると、泉が弾んだ声ではしゃぐ。 今日までの一週間、九月終りに行われる学園祭の 仕事で、一緒に帰れなかった。 たった一週間だが、この笑顔が見られなくて 物足りなかった。 いつもの日常が戻ってホッとする。 「いたいた。加藤、ちょっと待ってくれ!」 昇降口を出ようとしたところで、大声で 呼ばれて振り返ると、同じクラスのダチだった。 必死の顔をして走ってくる。 「どうした中井、なにか用か?」 「担任が文化祭の企画に修正箇所があるって 言ってきて。他の二人は帰っちまったんだ。 おまえがいてくれて良かったよ」 「マジか。それって、今やらなきゃダメなのか?」
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