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「やらんて、保護者かよ。どうせ俺ごときじゃ、
泉ちゃんに相手にもされねえけど。でもおまえ、
そうなると、あの人のことは認めたってことか?」
「あの人?」
何のことだ?
おれが、誰に何を認めるって?
「あれ、違うの?なんかさ、噂になってるだろ?
泉ちゃんと副会長のこと。俺はてっきりおまえも
知ってて、認めてるんだとばかり……」
「おい、それ、どういう噂なんだ。
詳しく話せ」
下校する生徒もまばらになった廊下の途中で、
俺は中井に掴みかかった。
泉を傷つけるような、根拠のない噂話をする
ならば、叩きのめすことも厭わないつもりで。
「落ち着け。なんだ、おまえ知らなかったのか。
あ、ほらあれ!ちょっと外を見ろ」
壁に押しつけた中井が、俺の後ろを指差す。
中井を押さえつけたまま、そちらに顔を
巡らせると、窓の外に俺にとっては衝撃の
光景が見えた。
それは───
泉と、並んで校庭を歩く男子生徒。
親しげに何かを話しながら、校門へと
向かって行く。
よく見れば、隣を歩く男は中井の言った
生徒会副会長だ。
顔と成績は良いが、次々と女を乗り換える、
悪い男として知られている。
それでもなぜか、女子の絶大な支持を集めて
副会長になった男だった。
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