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「イケメン副会長と泉の噂って、なんなんだ?」
二人の様子が気になったけれど、無理矢理に
視線を引き剥がして中井を睨む。
中井に罪はなかったが、じわじわと沸き起こる
焦りで感情のコントロールが難しい。
「う、噂だぞ。俺は聞いただけだから。あのな、
二人が生徒会室で抱き合っていたとか。キスして
いたとか。そういう噂があって。おい加藤!
どこに行くんだ!?」
「離せよ!」
「今おまえに行かれたら、俺はどうすんだよ!」
走り出そうとした俺の腕を中井が掴む。
そうだった、俺達は担任に呼ばれている。
腕を振りほどいて泉を追いかけるのは、簡単な
ことだ。
けれども、そうしたからといって事態が
変わるわけでもない。
「悪い。どうかしてた」
「とにかく早いとこ用事を片付けようぜ。
話はそれからだ」
項垂れる俺の肩を、中井が叩く。
いつもは俺の方がリードする側だけれど、
今に限っては立場は逆転していた。
一見して頼りない感じだが、実は中井の方が
鷹揚で器がでかい。
いざとなったら最も頼りになるやつだ。
中井の言葉に素直に従い、俺達は急いで
職員室へと向かった。
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