ヒスイ

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ヒスイ

「だめだったか」 結果は青賞。入賞しただけよかったのだが、自分としては傑作だったわけで、それが、以前の自分の、僕の作品と同じレベルだということに納得があまりいかなかったと言える。 「まあ、比べる相手は他人じゃない。自分なんだから、納得できる自分の作品を撮れればいいわけだよ」 その応答は、半分当たっていて、半分違っているのは、上記の通りなわけだけど、反論というか、反対する気持ちになれなかった。それは状況とか、立場とかという話ではない、と完全に否定できるものではないのだけど、それをどのように訂正、いや、訂正という言葉は違っている気がして、それに当てはまる、代替なる言葉が見つからない。そのような状況になれば諦める僕ではあった。 「そっちは、どうだった? というか、同期に上から目線ってそれなりにむかつくのだけど」 一つ上の鍵括弧を読んで、同期だと思った人がいれば、読解力が神がかっているわけだけど、まあ、そいつは、俺に苦笑いで答えた。 「残念ながら、入賞すらしてない。まだましじゃないか、入賞しただけでも」 そう言われてしまうと、僕は首を縦に振るしかなくなるわけで。 これが自分の写真に対する公の評価かと思い、足首を廊下側に向けた。 「ちょっと待つんだ。金賞の写真を見ていかないのかい」 そう言われると、確かにその通りで、自分の写真で満足するというのも、これはまた、展覧会の中では違和感のあるような気がした。 「金賞は三つ隣だ」 言われなくても、分かる。そこまで頼りないかと、言いかけたが、やめた。まあ、人から見れば、頼りないのだろう。 僕は、驚いたつもりなんて、ない。 「青い」 一言、そう呟いた。
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