ファイル:杉坂義人への任意聴取

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 もし女ができたら、麗子はすぐさま、その気配を察する。  これは女に特有の特殊能力さ。何でも不自然な変化を敏感に察知し、それをがっちりとキャッチする。  車の後部座席に落ちた長い髪の毛を発見したり、服から俺のものとは違う香水の匂いを嗅ぎ付けなくても、わかっちまうものなのさ。  女に言わせれば、男というのは、単純なものらしいからな。  もう空気感だけでバレバレって寸法だ。 それがわかってるのに、どうして他の女に手を出そうって気になるのだろう?  離婚する口実を与えて、がっぽり慰謝料をもっていかれるだけと理解しているのに、どうして落とし穴にはまろうって気になるのか俺には理解できない。  まあだらだらと話が逸れたが、とにかく俺と彼とが気が合ったのが、ほんの単純な、そういう経緯だったという話さ。  まあ女房のどうこういう愚痴は忘れてくれ。俺も忘れるようにつとめるから。  それからどうしたかって。  彼とは親友になったよ。彼とイチバン気が合ったのが、性格もさることながら、お互い似たような境遇にあったということさ。  まあ要するに、恐妻家ってこと。
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