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お母さんが帰ってくると聞いて、僕は泣いた。
嬉しいからじゃない。
聞きたいことがあるんだ。
どうして僕を置いていったの?
でもお母さんは、もう死んでしまった。
「今日、陽子が帰ってくるからな」
父がいきなり告げた。
半年ぶりに見た父は、ひどく疲れていた。きっと仕事ばかりしていたのだろう。
「え、どういうことなの?」
言葉の意味がわからずに首をひねる。
陽子は母の名だ。でも、お母さんは半年前に……。
「いいから。子どもは親の言うことを聞くものだ」
父がいつものように大きな声で注意する。
どうして疑問に思ったらダメなんだろう。
僕は黙ってカタツムリの殻に閉じこもる。
「オサム、私がロボットを開発していることは知っているな」
「うん」
お母さんと近所の人に聞いたよ。
「政府は世界に先駆けて、日本発のグローバル新産業に多額の資金投資をしているのだ」
「うん」
父は困るとむずかしい言葉を使う。
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