0人が本棚に入れています
本棚に追加
おもいびと
「うぁ……今日もかっこいいなぁ…」
店の外を歩く大学生の集団を眺めるのが手作りアクセサリーの店【Lapis】の店員である高峯櫂(タカミネカイ)の日課なのだ。ここら辺で1番大きな大学への近道がこの自分の働く店の前だった。
櫂のお目当ての人はいつも店の前を通る集団のキラキラしてる美人な女の人でもなければ、ふわふわ可愛らしい女の人でもなかった。
笑った顔が柔らかくて、女の人よりも背が高い1人の男、櫂はその男に一目惚れしたのだ。
見ているだけで幸せ、なんてそんなの嘘だと思っていた櫂は彼を見かけてからその言葉に納得した。
彼が店を通り過ぎるたった数秒の間、もちろん会話なんて交わしたことは無い、向こうは櫂の存在すら知らない。
話せるのであれば話してみたいと思っている櫂だが、そんなものは高望みなのだと理解していた。
「おいコラ櫂、店長の前で堂々とサボりかぁ?」
「げっ……臣さん…サボってねぇですよ!ほら、ちゃんと掃除してるっしょ?」
「嘘つけ俺見てたぞ?今日も例の櫂の王子様にでも見惚れてたんだろ?」
「別にっ!!王子じゃないですよ!!」
ぼんやり外を見ていた櫂に声をかけたのは店の店長である佐伯龍臣(サエキタツオミ)。
この店のアクセサリーは全て龍臣が作っており、そのクオリティにファンも多かった。
櫂もファンの1人であり、高校の頃からずっと通っていたため龍臣に誘われ高校を卒業したと同時にここに就職したのだ
「はいはい、わかりました~」
「臣さん絶対わかってない…」
「あ、あと今日の午後は俺ちょっと出ないといけなくなったんだが取りに来る予約してる奴がいるから渡しといてくれるか?」
「俺が渡すんですか?」
「あぁ、常連だから多分顔見た事あんだろ」
「うっす、了解です」
龍臣が言うに、来るのは常連の大学生
知った顔なら緊張もすることない
店長が用事出ててから少しして店のドアが開く
「あの~、すみません。オーダーしてたの取りに来たんですけど~」
「はーい」
書き物をしていた櫂は龍臣が言ってた大学生が来たと顔を上げた
「わりぃ真、ちょい待っててな」
「いいよ、別に急いでないし」
そこに居たのは男が2人
1人はよく店で見かける顔
そしてもう1人は
櫂が毎朝うっとりしながら眺めている彼だったのだ
最初のコメントを投稿しよう!