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「あっ!店員さん、俺のオーダーしたアクセできてる?」
常連である青年が櫂に声をかける
「あっ、はい。店長から預かってるんで取ってきます」
アクセサリーを取りに行く時、想い人の青年を盗み見る櫂
興味津々に店内を見渡す彼に櫂はまた心臓がキュッとなるのを感じた。
あれだけ会いたい、話してみたいと思っていた相手がびっくりするほど近くにいるのだ。
いやでも、櫂に話しかけに来た訳では無いのだ。
あくまでも友人の付き添いで来てる彼はこのアクセサリー店のアクセサリーは似合わないだろう。
もっと、綺麗な、シンプルなものが似合う。
考えれば考えるほど自分とは真反対で、絶対に交わる事がない人物なのだと、櫂は改めて思った。
「お待たせしました。注文されていたネックレスはこちらになりま……す………」
「あ、それって代わりに受け取る事って出来ますか?」
好きになるのを辞めなきゃだめだ。
そう思って注文の品を持って店頭に戻った櫂の目の前に居たのは、言葉を交わすことが絶対に無いと思っていた彼だった。
「すみません。アイツ彼女から電話だって外出ちゃって。代わりに受け取ってくれって頼まれたんですけど………店員さん?」
「え?あっ、代わりに受け取るんすね?この用紙に受け取りサインして貰ったら大丈夫なんで。」
綺麗な声だ。低くて心地いい。笑顔がかっこいい。人ってこんなに綺麗に笑えるんだ。
そんなことを考えているとぼんやりしていたみたいで、我に返った櫂は慌てて受け取り用紙を取り出して彼の目の前に置いた。
彼は『分かりました』と言うと柔らかく笑ってペンを手に取った。
綺麗な手。でも、血管が浮き出てて男らしくてかっこいい。用紙を滑るように書かれたのは未だ知らぬ彼の名前。
『白銀真』
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