ゆめかうつつか

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嬉しい誤算とはこの事だ。 理旺と連絡先を交換した櫂は真と仲良くなれた嬉しさとは別の嬉しさを感じていた。 友人の少ない櫂はまず連絡先を交換したいと言われた事がない。だからこそ理旺からの申し出を聞いて心臓がギュッとなった。自分のスマホに家族と店長以外の名前があることに感動した。 それだけでも満足だった。 「じゃあ、俺とも連絡先交換しない?」 ふわりと微笑んで真が鞄からスマホを取りだした。 「え?」 「せっかく仲良くなれたから。俺も櫂くんともっと話したいなって思ってね。……だめかな?」 ポカンとしていた櫂の反応を見て真は自信なさげに「だめかな?」と聞いた。しかし櫂からすればダメな訳が無い。むしろ願ってもない事だった。 「あ、いや、えっと、……じゃあ、お願いします……」 「あは、敬語じゃなくてもいいよ。」 「いやでも……」 「いーのいーの、俺ら客だけど年齢そう変わんないだろうし?俺も真も櫂と仲良くなりたいからさ!」 「じゃあ、よろしく?」 「うん、よろしくね櫂くん。」 「あ、呼び捨てでいいよ。」 「そう?なら俺も真って呼んでよ。」 「おう」 「俺も!理旺って呼んでな!!」 「ん、わかった」 連絡先に増えた、櫂の好きな人である『白銀真』の名前。 そして、初めて自分と仲良くなりたいと言ってくれた男『優木理旺』の名前。 櫂はその名前を見るだけで頬が緩むのがわかった。 「んじゃ、俺ら帰るな!またな櫂!また買いに来る!!」 「またね。俺、今日から櫂の作るレジンアクセサリーのファンになったからまた買いに来るよ。」 「あぁ、理旺、真、またな。待ってる。」 とても、嵐のような時間だった。 あっという間に過ぎ去ってしまったが、とてつもない爪痕が櫂の中には残った。 好きな人と近づけただけだは無い、友人までできてしまった。 まだ胸の高まりがおさまらない。 ドキドキと鳴る心臓を抑え、櫂は店長の帰りを待った。 何気に櫂の恋を応援してくれている彼にも、今日の成果を教えなければと高ぶる気持ちを抑え、櫂は閉店の準備をはじめるのだった。
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