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目の前の料理はまるで一種の芸術品のような輝きに満ちていた。
一口食べてみた。
なんだ、この料理は!絶品と言う言葉では言い表せない!
お酒も絶品だ、香りの芳醇さ、味のまろやかさ、どれをとっても一級品、いや特級品だ。
さらに、ここにいる人たちは、つまらない愚痴も、くだらない自慢話もしない。
こんなにおいしくて楽しい宴会は生まれて初めてだ!いや、死んでしまっているからおかしな表現だが
来る日も来る日も宴会が続いていた。ここでは食べ過ぎておなかが痛くなることもないし、悪酔いすることもない。
食べることに飽きればどこまでも続く草原を散歩して、暖かい陽気の中で草に寝そべり眠りに落ちたりもした。
幸せな時間がここではいつまでも流れていた。
しかし、転機は突然訪れた・・・
いつものように昼寝をしていた私が目を覚ますと、同じような白い服を着ているが我々より一回り大きく、立派なひげを蓄えた
恰幅のいい老人が目の前に立っている。
ここの人たちは浮世離れした雰囲気を放っているが、この老人のそれは他の人と格が違っていた。おそらく神だろう。
「いやぁ、すまんねぇ。君、ちがうんだよ。」その老人は厳格な雰囲気とは裏腹にとてもフレンドリーに話しかけてきた。
「え?どういうことですか?」
「いやぁ、我々の手違いでこちらに来てしまったようなんだ、君はまだ死んでない。」
「というわけで、君は現世に戻れるわけだ。よかったね。」彼はそういうと僕の背中を押した。
ふと、下に落ちる感覚に襲われた私はとっさに神様に尋ねた。
「もう一度ここに来れますか?」
「一生懸命生きていればな、自分で命を絶つのはだめだからな。」
次に気が付くと、病院のベッドでチューブがたくさん繋がれた状態で私は寝ていた。
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