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「なんで鍵、掛けたの」
「……」
私の問い掛けに応えず彼はそのまま私の傍まで近づいて来た。
「……いつ、日本に帰って来たの」
「昨日」
「なんで……なんで……なんで帰って来たのよ」
「だって可愛い妹の結婚式だよ? 兄として出席するために帰国するのは当然じゃないか」
「っ!」
私が振り上げた掌を彼は避けようともせず、なすがままに頬をぶたれていた。
パァンと小気味いい音が室内に響いた。
「か、可愛いとか……妹とかいわないで!」
「……」
「逃げたくせに……ひとりで……勝手に逃げ出したくせに!」
「……」
「よくもいけしゃあしゃあと私の前に姿を現せたわね!」
「……」
彼の胸を力いっぱいドンドンと叩く。
それでもやっぱり彼は私にされるがままで一切の抵抗をしなかった。
「馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿! 今更……なんでっ」
「……紗奈」
「!」
ウェディンググローブがはめられた腕が取られ体がグッと彼の中に引き込まれた。
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