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16歳の私と31歳の智春。
たったふたりきりになった私たちの間がどう変化して行ったのかは想像するに容易いと思う。
優しくてかっこよくて妹に甘々な兄に対して兄以上の好意を抱いていた私。
小さな頃から可愛がって来た妹が好意を寄せていることに気が付いていた智春。
お互いとっくにただの兄妹なんて関係じゃいられないのだということに気が付いていた。
だけど気持ちを大ぴらに出来なかったのは両親というストッパーがあったからだ。
私たちは仲のいい家族だった。
血こそ繋がっていなかったけれど10年間、本当の家族の様に仲がよかったのだ。
でもそのストッパーが無くなってしまったら──……
「……お兄ちゃん」
「紗奈…?」
両親が亡くなった喪失感を埋めるために私はたったひとり残された家族である智春にすがった。
ううん、それは詭弁だ。
本当は両親の死をきっかけに私は智春ともっと深い関係になりたいと思ったのだ。
私は酷い娘だ。道徳観を失い、ただの肉欲に溺れてしまいたいと強かに智春を誘惑した。
そしてそんな稚拙な誘惑を智春は受け入れてくれた。
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