ある広告

1/1
前へ
/4ページ
次へ

ある広告

昔々ある所に、たいそう腕の立つ料理人の男がおったそうな。 彼は多忙な生活の中で、やっとのことでスケジュールを空けることができて喜んだ。 そんな久しぶりの休息日のこと。 一つや二つの眠りでは疲れが取りきれない。 それほど彼は疲れきっていた。 そんな身体に鞭打って、溜まりに溜まった郵便物を、箱から思い切り引っ張り出して、彼はゴミ箱へと歩きだした。 その途中、広告の塊の中から何枚かが、床に落ちてしまった。 疲れからか苛々が募り、見ずに捨ててやろうと勢いよく拾い上げた中の1枚の広告、その感じたことのない肌触りに、彼は思わず目をやった。 『地球スープを召し上がれ 海の幸、山の幸、選り取り見取りの作物たち 恵みの星、地球が育んだ豊かな産物を 配合した濃厚で芳醇なこのスープ 完全限定1名さまのみの販売 注文を受けてからお作りします』 いったいどんな味だろうか。 俺の作る料理よりも美味いのだろうか。 これは料理の参考になるかも知れんなぁ。 随分と値が張るが、そこがまたリアルじゃないか。 彼は早速、申し込みのメールを送ったのだった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加