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最後の一冊を手に取る。背表紙にある図書番号を確認してから、本棚の仕舞う場所を探した。下から順に見ていって、視線は一番上の棚で止まる。……私の身長では、背伸びしても届かない高さだった。いつもなら大夢くんに助けてもらっていたけれど、何だか気まずくて話しかけにくい状態はまだ続いている。私はつま先立ちをして、さらには腕を伸ばして持った本を仕舞おうと踏ん張る。でも、まったく届きそうになかった。
「……貸して」
「え……?」
私の手から、本がするりと抜けていく。いつの間にか私の背後に立っていた彼が、大きい手で私から本を奪い取り、長い腕がするっと本棚に仕舞ってしまう。
「あの、ありがとう」
振り返ると、想像していたよりも近いところに……大夢くんが立っていた。私の肩が、大夢くんの胸のあたりに触れる。少ししか触れ合っていなのに、熱い彼の体温がすぐに伝わってきた。
「あ、あの……」
大夢くんは、中々避けてはくれない。本を仕舞ったばかりの手は本棚をついていて、もう片方の手は、私の腕を掴んでいた。私たちの距離は、少しずつだけどゼロに近づいていく。
「大夢くん……?」
「ごめん」
見上げると、いつも透き通っているはずの大夢くんの瞳が少しだけ曇っている。
「キス、うまくできなくって」
「え、や、あの……私の方こそ、ごめんなさい。初めてだから、へたくそで」
「いいよ。……ああいうのは、男がちゃんとエスコートするもんでしょう?」
「そう、なのかな?」
「そうだよ。……ちゃんと、イメトレしたのにな」
「え?!」
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