13章 疑惑の波紋

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「じゃあ次のシーンいきます」 スタッフの掛け声にキャスト達は慌ただしく自分の出番の位置を確認して配置に着く。 遠目にいる藤壺の様子をちらりと横目で窺いながら、廊下で女房達を口説くシーンだ。 光の君が中々自分に熱を上げてくれない藤壺に対して妬きもちを妬かせようとする場面── まるで俺と晶さんそのものだな…… 嫌というほど橘さんの書いたこの光の君は今の俺の立場と重なる。 廊下で柱に女房を追いやり迫りながらイチャイチャして見せつける… そんな子供のような光の君の所業。 舞花の演技力は要らず、俺だけの表情にカメラは向けられる。 女房の髪の束を手に掬い唇を付けながら見つめて藤壺の方へ視線を流した。 「──…」 舞花が妬いた表情を俺に向けている。 台本の中の藤壺はこのシーンで妬いたっけ? そう思いながら口端に笑みを浮かべて首を傾げ、そのまま女房に口付けた── 「カッ──ト!おつかれっ」 唇が重なる前に合図がなる。カメラワークではしっかりとキスしているように映っている。 取り合えず今のシーンは一発オーケー。 まだ中盤な為に軽く押し倒して迫るくらいで、舞花との本格的な濡れ場撮影はない。 舞花も本気で妬いてるんだろうか? 「……晶さんもあのくらい妬いてくれれば可愛いのにっ」 俺は小さく愚痴を溢した。
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