13章 疑惑の波紋

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・ 髭はほんとにテキトーな奴だ。タクシーの中で沸々と怒りが沸いてくる。 名も売れなかった女優の藍原 舞花── 突然のヒロイン抜擢は藤沢 聖夜の恋人だからか── 一時期流れたそんな噂。 初めて受けた大手化粧品会社。その仕事内容は秋に発売された20代後半から30代向けのファンデのCMだ。 テレビCMでは 『25から女──』なんてナレーションが流れる中で、舞花がアップで映る映像が大人の女性の注目を集め始めている── その後の俺とのドラマ共演抜擢。女性からの舞花の支持率は少しずつ高くなっていた。 売り出すにはいい波に乗ってきている。 「あのさ…」 事務所に着くと俺は挨拶も無しに社長に詰め寄った。 「俺を舞花の餌にするの止めてくんない!?」 「あ~…」 髭はくたびれたような返事を返す。 「もう売れるチャンス手に入れたんだから俺、必要ないじゃん!」 ドカッとソファに身を沈めた。
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