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髭はほんとにテキトーな奴だ。タクシーの中で沸々と怒りが沸いてくる。
名も売れなかった女優の藍原 舞花──
突然のヒロイン抜擢は藤沢 聖夜の恋人だからか──
一時期流れたそんな噂。
初めて受けた大手化粧品会社。その仕事内容は秋に発売された20代後半から30代向けのファンデのCMだ。
テレビCMでは
『25から女──』なんてナレーションが流れる中で、舞花がアップで映る映像が大人の女性の注目を集め始めている──
その後の俺とのドラマ共演抜擢。女性からの舞花の支持率は少しずつ高くなっていた。
売り出すにはいい波に乗ってきている。
「あのさ…」
事務所に着くと俺は挨拶も無しに社長に詰め寄った。
「俺を舞花の餌にするの止めてくんない!?」
「あ~…」
髭はくたびれたような返事を返す。
「もう売れるチャンス手に入れたんだから俺、必要ないじゃん!」
ドカッとソファに身を沈めた。
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