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どんどんどん、
ドアをたたく音で目が覚めた。あたしはこたつでねていた。体が重くて、朝からずっとぐだぐだしていた。
どんどんどん、
さっきより強くたたかれて、あたしの体は固くなった。工場の人にとうとうへやをつきとめられたのかと思ったのだ。
でも、
「えりすさーん」
だれの声だかわかって、心のそこからほうっとした。
やっと起きていって、げんかんのドアをあけた。
やっぱり鴎さんだ。はあはあ息を切らして立っていた。
あたしはびくりとした。
さっきまで朝だと思ってたのに、外はまっ暗で雨がふっていた。それにもおどろいたけど、鴎さんのかっこうに一番おどろいた。白いレインコートをきて、見たことのあるぼうしをかぶっていた。あたしを見て、大きい白い息を吐いて笑った。
「よかった、いたあ。この時間だったらまだ工場だろうって思って行ったら、やめたって言われて、びっくりしたあ」
あたしはもう一度びくりとした。
鴎さんは丈一さんの友だちだ。もし、クビになった理由をいったら、きっと丈一さんに伝わっちゃう。だから、ほんとのことはいえない。でもあたしはばかだから、うまくうそなんかつけそうにない。
鴎さんは、クビになった理由をあたしに聞かなかった。それより大事なことがあるみたいで、きょろきょろへやの中を見まわした。
「テレビ……見てない、のね」
「うち、テレビ、ないの」
まだびくびくしながら、あたしは鴎さんの頭からつま先までを見た。
「鴎さん、それすごい、本物みたい」
「ああ?」
鴎さんはレインコートの前をあけて中を見せた。中身も本物そっくりだ。どこからかていき入れみたいなのを出して、ぱかっとひらいた。まじめな顔の鴎さんの写しんと金色のバッジが入っていた。
「本物みたいじゃなくて、本物だよ。だって僕、本物のおまわりさんだもん。かっこいいっしょ……じゃなくて、とにかく上になんか着な。パトカーのせてあげっから」
あたしはあわててへやの一番おくまで下がった。まどにせ中をつけていやいやって首をふった。
「つかまえにきたの? あたしをつかまえにきたの? あたしけいむ所に入るの?」
鴎さんはおでこをぽりぽりかいて、こまった顔になった。
「そんなことしない、君を捕まえたりしない。ひどいこともしない。誓うよ、だって、僕ら友だちじゃん」
「友だち?」
「そうさ、友だち」
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