イロの話

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私は何もない荒野を歩く。 何の目的もなく誰に言われた訳でもなく理由もなく歩き続ける。 最初から私はここにいた訳ではないはずなのに、昔のことが思い出せない。 砂の中に混じる石ころを何となく強く蹴り、飛んでいく石が偶然誰かに当たってしまう形でしか、加害者を演じることが出来ない。 しがらみから逃げ続けるしがない一般人には挽回のチャンスは与えられるわけもなく、信頼を獲得する前に愛想をつかされる事なんて、ざらにあることだ。常に誰かに付きまとわれて、表情作りに関しては職人級のクオリティを実現できる。その無駄な努力に相反して、培ってきたかった努力はことごとく否定されて、踏みにじられてきてしまった。 それにもかかわらず、誰にも関わらず、何処にも括られず、私は歩いてきた。 しぶとく、しつこく、甲斐性もなく。 色々な物に挑戦しては、ことごとく不戦敗を演じてきた。 砂の中から無垢な髑髏が無機質な表情をこちらに向ける。 まるで死ぬに死ねない私を嘲笑うように。 その頭蓋を蹴る気力にすらならず、見て見ぬ振りをする。 ここでさらに不戦敗がひとつカウントされた。 ふいに強い砂埃が舞い、身体が浮き上がる。 このまま無責任にサレンダーも悪くない。 散々堪えて来たんだ、選んで来なかった私にはらしい最期だ。 砂が肺の中を駆け巡る感覚に僅かに歓喜しながら、私は助けを求め、夢の中へと堕ちていった。 私は今日も妥協することに成功した。
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