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ウタカが目を覚ますと、そこは内扉庁の白い部屋の中だった。爪を剥がされた指が未だ痛む。
「良くやった。」
長官が部屋に入ってきて言う。
「私には一体何が何だか。」
ウタカは正直に言う。宗教施設に潜入し、見つかり、そして上手く逃げ果せた。リーダーを拘束出来から、それで成功ということだろうか。
「新聞を読めば大体のことは分かるだろう。」
長官はウタカに新聞を放った。
その記事によると、リーダーを奪われたクロ・ヌーボーは密造した銃器によってシロの本部を襲った。
しかし、シロの方でも銃器を備えていて、両者は抗争によって壊滅状態に陥る。
政府はこの事件を受けてクロ本体の強制捜査にも踏み切り、解散命令を出した。
一連の出来事で宇宙船の内部からシロとクロの宗教団体が2つとも消え去ったのだ。
この結果が内扉庁の思惑通りだったとしたら、ウタカはこの抗争を巻き起こすことを求められていたということだ。
「もしかして、銃はもともと政府の...。」
ウタカは長官に聞く。
「その通り。彼らには拳銃を製造する能力などない。しかし、彼らのような存在はこの船の運行にとってリスクとなり得ると判断したのだ。彼ら一般人が目的地について深く考えることは、必要ない。」
ウタカはガツンと頭を殴られたような気がする。政府は民間人に船の行く先を考えさせまいとしていたのだ。
「そうね。でも私は知りたい。」
その時、部屋に入って来たのはあのケイだった。銃口を長官に向けている。
ケイはカツラを外すと、それはあの同期の女だった。彼女もまたウタカと同じ目的でクロ・ヌーボーに潜入し、ウタカを助けたのだ。彼らにシロと思われていたウタカがリーダーの男を銃を使って連れ出したことで、クロはシロもまた銃を持っていることを知り、一大抗争事件に発展したのだった。
「ウタカも、そうでしょ。」
彼女はウタカに言う。彼女が自分の本名を知っていることに驚く。しかし、これは願っても無いチャンスだ。ウタカは黙って女の指示に従う。
長官は女に銃を向けられたまま、ウタカたちを操舵室に連れて行く。
「ここだ、入るが良い。」
操舵室は建物の他の場所と同じく白い部屋だったが、そこにはウタカの知らない機械が沢山置いてある。ウタカは操作する人間を探すが、そこには誰もいなかった。
「一体、これは。」
ウタカは途方に暮れる。一体どうなっているのだ。
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