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一方で、シロとクロ以外の大多数の人々は”アオ”と呼ばれる。もちろん、ウタカもサキもアオだ。アオの人々は宇宙船の辿り着く先を、もう一つの地球のような星だと考えているか、あるいは目的地について何の考えもっていない人々だ。アオにとっての専らの関心は彼らが何処に向かっているかということよりはむしろ、今何をしているかということにあった。だから、アオの人々には戒律など存在しない。自由に、自分の幸せの為に生きることが、結局は宇宙船を動かし、生命を次に繋ぐことになるのだ。
シロとクロの信じるところはまるで反対であったから、彼らが対立するのも無理はない。彼ら親切心は、互いに対しては決して発揮されなかった。
つい最近も刃物による殺傷事件があったばかりだ。シロの過激派が市街地でクロの幹部を殺害し、アオの民間人が数人巻き込まれている。
大多数を占めるアオの人々は、シロやクロを危険な宗教集団として忌避する傾向にある。しかし実際はアオの人々の方がよっぽど犯罪者も多かった。
同じ宇宙船に乗っている以上、シロもクロもアオも同じ目的地を目指しているにも関わらず、その解釈でこれほど争いがあるものなのかと、ウタカは悲しく思う。しかし、いずれにしても、宇宙船が何処に向かっているのかを本当に知っている者はいない。それは政府の人間も同じだ。誰一人として、ウタカたちがいる世界について知っている者はいなかった。
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