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「そろそろ家に帰りましょう。」
サキは言った。気付くと人工の太陽が沈みかけている。
ウタカはその太陽と、それを動かす政府の建物を睨みつける。その建物には宇宙船の運航を管理するオペレーションセンターが入っている。無論、民間人の立ち入りは禁止されており、堅牢な鉄の扉をが入り口を閉ざしている。
「ああ、帰ろう。」
ウタカはサキに言った。ウタカは知りたいと思った。ウタカ達をのせた宇宙船が一体何処に向かっているのか、ウタカ達の人生は何の為にあるのか。
ウタカは政府の役人になることで、それを見つけようと考えた。政府の中には王族の命令を直接受ける内扉庁と呼ばれる省庁が存在する。政府機関の中でも選び抜かれたエリートのみが所属する、実質的な中枢機関だ。
ウタカはサキの手を取って、自宅へ戻る。サキの細い指がウタカのゴツゴツした指に絡まる。
ウタカは思う。
サキと2人、平穏に暮らす道もあるのだ。
宇宙船の目的地なんてどうでも良い。今の幸せがあればそれで良いのではないか?
それはアオの人々が暗黙の内に承知していることだった。
しかし、ウタカはどうしても好奇心を捨てきれない。自分の生きる目的を知りたいと思った。天国であれ、地獄であれ、もう1つの地球であれ、それが何なのかを知ることなしに、自分を納得させることが出来ないのだった。
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