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政次は幼い時分から頭が切れて、よく気が付く子だった。
本当は心根の優しい子なのに千代にはいつも憎まれ口を叩いては喧嘩をしていた。
あの頃から何も変わっていなかった。
最期に優しい瞳をして政次は逝ってしまった。
愛しい者たちに弔いの念仏をあげる度に、
己の無力さを思い知る。
本堂に静かに佇んでいる仏の顔を見ながら世の無常を嘆くのにはもううんざりだった。
神も仏など、どこにもおらぬ。
生きている我らこそ尊い存在なのだ、と罰当たりにもそう思った。
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