last chapter 愛スル者ヘ

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心置きなく皮肉が云える唯一の相手すら失ってしまった。 半身を引きちぎられたような痛みと、例えようのない喪失感に溺れそうになったが、それ以上に腹が立った。 何故じゃ? 政次は何故このような事をしたのか。 真っ白になった頭の中で和尚の言葉が響いた。 「そなたらは、比翼の鳥じゃ。    片方を失のうてしもうたら、  この広い空は飛べぬであろう。  だからこそ、互いを大事にせよ。  活かし合う道をひたすら探さねばならぬの。  さすれば真の伴侶となれるであろう。」 ご初代にお供えした酒をしこたま飲んで昼寝をしていた和尚様が寝ぼけ眼で二人に向って言った。その時は、酔っ払いの戯言だと顔を見合わせ笑い合ったが、正直に言うと伴侶という言葉に照れ臭くなり笑って誤魔化したのだった。 だが、今その言葉は痛いほど胸に突き刺さる。 本当にその通りなのだ。 もう我はこの広い空は飛べぬ。 なにより飛びたいなどと思えぬ。 何故、我を置いて行ってしもうた。 まこと、そなたは昔から意地悪じゃ。
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