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冷たい目で政次を見つめる父を睨み返しながら言った。怒りなのか緊張なのか分からないが握った拳が小刻みに震えた。
声まで震えそうになるのを一度唇を噛みしめて耐え、ごくりと唾を飲み込んで口を開いた。
「父上に何を言われようとも、私には、できませぬ。」
「よいのか、お前はそれで?」
「どういう意味に御座いますか?」
「くくっ、相変わらずその頭は使い物にならぬの。」
「・・・・」
「そなたは幼い時分から次郎様...いや、千代様を好いておるであろう?」
「なっ、何故そのようなことを。」
「知らぬと思うてか?里の者ならば皆知っておる。
好いておるのだろう?
故にお前に任せてやろうと思うてな。
そんな親心がお前には分からぬか?」
「親心?」
「そうであろう?」
「それは親心とは言いませぬ。」
「好いておる女子を抱かせてやろうというのだぞ?
男なら喜ぶべきところであろう?」
「そのようなことは私は望んでおりませぬ。
人の道に外れてまで、好いた女子を手に入れたいと思うておりませぬ。」
「人の道に外れる?異なことを。好いた女子を抱くということが、何故、人の道に外れるのだ。当たり前のことであろう?」
「女子にも意思はございますゆえ。」
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