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「俺が汚いか?卑怯か?いつかお前も、俺と同じ道を辿るぞ。必ずな。」
家人たちの騒ぐ声に掻き消されてしまうほど小さな呟きだったが、しっかりと政次の耳には入っていた。
悍ましい。
肌の下に毛虫が這いずり回っているような強烈な不快感に襲われた。
俺は、父の言うとおりになどならぬ。
あの夜、
鼻血で赤く染まった父の顔を見下ろしながら、
そう誓った。
その時はそう思ったものだが、年を重ねるにつれ次第に父の考えが読めるようになってくる自分が居た。
考えだけでなく外見も次第に父に似通っていった。
ときおり自分の発した声にはっとさせられる。
仕方がないことなのだ。
親子なのだから。
あの男の穢れた血はこの躰の中も巡っているのだから。
それだけは永遠に変わることのない事実だった。
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