ep3 覚醒ト決意

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女は恐ろしい。 そう思い込んでいる自分がいる。 だが千代は別だ。 先ほどまでそう思っていたのに。 それなのに月明かりに照らされ自分に微笑みかけているのは、間違いなく自分が恐れいていた『女』だった。 急に体が強張り、指先が小さく震えた。 「いかがした?」 千代が眉を寄せて顔を覗き込んできた。 きっと情けない顔をしていたに違いない。 「いえ。」 必死に取り繕うしかなかった。 この屋敷こそ井伊の中で最も警戒せねばならぬ場所なのだ、あの男がここにいる限り。 息子であっても利用する価値があるならば骨まで利用するだろう。 あれは、そういう男だ。 千代が部屋に足を踏み入れる瞬間、ふわりと空気が動いた。 その瞬間、 『犯してしまえ。今なら誰も気づかない。犯してしまえ。』 頭の中で声が響いた。 あの男の声か、それとも自分自身の声なのか分からなかった。
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