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昊天は、ゴクリと唾を飲み込んでから口を開いた。
「この手であの子の命を奪わねばならぬのですね・・・」
「ああ。」
何年も、何度も二人で話し合い決めていたことがあった。
もしあの子が、
次郎がそうなった時、
自分たちが引導を渡してやろうと、
この手であの子を救ってやらねばと、
そう決めていた。
「やはり貴方でも恐ろしいのですか?」
「たまらなくな。」
普段と変らぬ淡々とした口調だが、
僅かに声が震えていた。
幾度も修羅場をくぐり抜けてきたこの者でさえ、恐ろしいなら、自分の足が震えるのは仕方がない。
「ですが、私たちが次郎を救ってやらねばなりませんね。」
「そうじゃ、もうあれはおらんからな。俺たちが、あの子を救ってやらねば。」
普段からあまり笑わぬ男が、見たこともない程の穏やかな笑みを浮かべた。
まるで菩薩のようだった。
みなあの子を愛しているのだ。
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