last chapter 愛スル者ヘ

1/13
前へ
/73ページ
次へ

last chapter 愛スル者ヘ

「俺にとって、井伊とはお前そのものだった。  そして、お前は俺の希望だった。  俺の命に代えても守りたい宝だった。    だから、生きてくれ。  俺のために。  お前を永久(とわ)に愛している。」 この世で一番愛しい男はそう言った。 別れる前の日だったっと思う。 まるで、そうなることが分かっていたかのように、しっかりとそう言ったのだった。 「戯言に御座います。」 といつものように誤魔化してしまえばよかったのに。 何故、今になって正直にいうのだろうか。 最後まで闇で覆い隠しておけばよかろうに。 もう遅いのだ。 我の声は届かぬのだから。 そなたがいれば、何もいらぬのに。 この卑怯者め・・・
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加