気持ちの良い風

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 私はふと、空をみた。  空には何か分からない鳥が飛んでおり、太陽が気持ち良く、背伸びをするようにに光を放っていた。目の前に無限に広がる吐き気がするほど真っ青な空に、私は吸い込まれるんじゃないかと心配になった。  誰もやろうと思わないことがしたい―― 「そうだ!」  私は、意を決して意気揚々と屋上の柵から身を乗り出した。  今日、誰もやりそうにないこと。  それは、自殺だ――  私は笑顔で屋上からジャンプした。  風が私の体を力強く纏う。あぁ、今まで味わったことのない凄い風だ。隕石ってこんな気持ちなのかな、なんて。こんな美しい日に自殺なんて似合わないだろう。なんとも不釣り合いで、不恰好だ。しかし、そう思っていたのもさっきまでで、こんな天気の日に自殺をしてみると案外、似合っているんじゃないだろうか、と思ってきた。だって、こんなにも風が気持ち良いのだから。曇天の日に飛び降りてもこんな気持ち良くは飛び降りれないだろう。もしかしたら、今日は自殺日和なんじゃないだろうか。  ん? 自殺日和? 自殺日和だったら私の他に自殺しててもおかしくないじゃないか! それだと私が自殺する意味が無くなってしまう。  ああ、待ってくれ、待って、タイムだタイム。死にたくない。どんどん地面が近付いてくる。死にたくない死にたくない死にたくない! あああああああああああああああ――  真っ青な空に、こんな天気に似合った鈍重な音が響いた。
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