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友人たちへの報告は、ちょっと面白おかしくしてやろう、なんて考えてハンバーグを完食する。満足げにティッシュで口を拭いた僕に、ブルーマンはふと口を開いた。
「ひとつ、面白い話をしてあげようか」
それは授業中に先生が、勉強の合間に入れてくる小話の前触れのような言い方だった。うなずくと、ブルーマンは語りだした。
「とあるところに、夫婦とその一人息子がいたんだ。ごくごく普通の、どこにでもいる一般家庭さ。そう思っていた──まわりも、息子もね。
しかしある日、母親が行方をくらました。息子は父親に、母親はどこへ行ったのか尋ねた。父親は『母さんは遠いところへ行ってしまったよ』と伝えた。息子は悲しくて寂しくて、泣き明かした。
そんな息子に、父親は温かい料理を用意してくれたんだ。温かい笑顔で、温かくこう言った──『どうだい、母さんは美味しいだろう』」
ブルーマンは目尻のしわを増やした。
「今しがた息子が食べたのは、父親が母親の肉を使用して作った料理だったのさ。それを悟った息子は吐き出したかったが、吐けなかった。
それ以来父親を恐怖の対象とした息子は、いつ自分も食われるんじゃないかとビクビクした。包丁を向けられるんじゃないのか、舌舐めずりして父親は自分を見ているんじゃないかと……気が狂いそうな毎日さ。追い詰められて病院に通いもしたが、良くなることはなかった。
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